第1章

4/5
前へ
/5ページ
次へ
 ……うおぉぉぉぉっしゃあぁぁぁぁあ!  確率が上がりつつある。俺は今、確信する。 Wさんの例え義理であっても。いや義理なら 普通でいい。わざわざ前もって隠す事もない。  だが油断はするな。友チョコだとしても、 大きな一歩だろう。人類にとっては。 手作りっぽい気がする。手作りだ。  違っても手作りだと思って頂くのが礼儀。  問題はコレをどうやってカバンへ移動。 その時、俺はチョコが暖房で溶けない様に、 密かに数センチだけ、窓を開けておいたのだ。  急な突風で風がカーテンをフワっと仰ぐ。  いまだ!コンマ0.3秒の早業だったと思う。 勝ったのだ。俺は今、勝利を噛みしめている。 直後にAとBがバカ面さげてやってきた。 A「嫌な日だよな。」 B「マジ、早く帰りてー。」 俺「……。(俺はWさんと帰りたい。)」  その後、Wさんが戻っても、どうにも緊張し 目を合わせられない。元々だけどWさん可愛い。 Wさんだってとにかく放課後まで、気まずいか。          *  なんだかんだで、放課後になってしまった。 Wさんは日直でN君と職員室へ行っている。  AとBに帰ろうぜと言われたが、ちょっと 進路の事で先生と話したいんだと言って、 適当に誤魔化し、先に帰宅させた。  あとはN君を上手く回避させれば……。  しつこいようだが、やはり気になる。 本当にこれはWさんからのチョコなのか。  いま、教室は誰もいない。二人が戻っても 問題にならないように、こっそり机の下で 開ければ確認できる。  万が一、2人に見られてもN君の人柄から、 それを噂の種にするような人じゃない。 だから、彼はモテるのだ。イケメンだし。  よし。開けよう。 17年間、海賊王になるまで探し求めたこの  箱……の枠。あれ?!  リボンはシンプルで文字も模様もない赤。 シールで留めていない単なるチョウチョ結び。 解くと、茶色いいかにもチョコレート様って 感じの色の包装紙だが、文字や模様は無い。  で開けた。箱じゃなく箱の枠だけ入ってる。  つまり15cmくらいの正方形の箱で、 底まで厚さ3cm程度。ハートチョコなら、 ぴったりなサイズで御座います。  でも、フタが無くて底が黒い。入れ忘れ? そう思ったけど、カードやメッセージもなく。 俺宛とも書いてない。空箱だと思ってクスっと 笑いながら持ち上げた。  箱の底は黒いのではなく、暗いのだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加