第1章

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そして言わせてもらえば僕は来年度から大学生である。だからニートではない。断じて。 「なんで息子がすねがしりで笑顔なのかは知らないけどさ。」 「あらあら?子供に頼られるのは親はいつだって嬉しいものよ?」 「親なら子供の自立を願ってよ。」 もしかして意外とうちの母親バカなのかな?……間違えた親バカなのかな? 「あんたは手がかからない子だったからね。イチお母さんとしては張り合いがなかったのよ。」 「そう。」 「だからほら、いい機会だから甘えてきなさいな。」 母さんはおいでとばかりに両手を広げる。 「遠慮しとく。」 スルーして食器を流しに片付ける。 「ほらー、そういうところよ。普通なら怒ってもいいところよ?子ども扱いすんなババア!ぐらい言われるのを私は期待してたわ。」 「嫌な期待だね。」 「なんかないの?私を困らせるようなこと。」 僕にぐれて欲しいのか。 尚も期待のまなざしを向けてくる母さん。多分、今日は母親をしたい日だと思う。でもなあ、何か後ろめたいことなんて… 「あ、そうそう。僕一年くらいまえからバイトしてるから。」 「えっ、うちの子完璧すぎる。」 うわ、褒められてるのになんか嬉しくない。 自分の子供を完璧とかいっちゃう母親。ないな。 「何で嫌そうな顔をしてるの。」 「いや…」 「というかいつのまにバイトなんて。欲しいものがあるなら買ってあげるのに。」 「え、いいの?」 「母さんからの進学祝いよ。車とか本当に何でもいいわよ。」 「じゃあ一人暮らし用の家を。」 「もっと現実的なもので頼むわ。」 「じゃあお父さんを。」 「お父さんはもういるでしょ?ずいぶん帰ってきてないけど。」 親父が家ほっぽりだして3年いないのもどうかとおもうんだけど。最後に見たのが中3のころだ。今頃どこで何をしているのか。
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