恋なむ凍て 死んぬるか、否 芽ぞ宿しつる (字余、乃至異形式)

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ぞ・つ-る: 専ら他動詞に付き有意志動作完了を表す助動詞「つ」の、係助詞「ぞ」による係結び。上述に同様、強調・詠嘆を表し、係助詞により主格格助詞を代替する。現代語散文ならば「~が既に~ているではないか」等の意となろうか。 加うるに、係助詞による強調・感情移入に関しては、「ぞ」の語が「なむ」よりは強く「こそ」よりは弱い、との解釈がある。これに従い、「なむ」は「さえも」という添加の意を中心に控えめな強調を表し、「ぞ」は強調しつつも激烈にまでは至らず静謐を保つ。 字余(異形式): 六七七の音節を採るこの句は最早俳句の体を全く成していない、と見做し得るかも知れない。旋頭歌の片歌としても字余である。 が、この破格は係助詞・係結びの多用による、即ち、より強い感情的強調表現の意図によるものだ。「死(と永劫断絶)」に直面したとさえ思われながら、それでも「新生・再生」を確信して湧き出た感情が、決して誇張された激烈でなくしかし如何とも抑え難い「叫び」として、詠者(また誦者)自らに表れ破格を生じた、と解釈することは不適切不可能であろうか。
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