~臭い中にも花は咲く(´A`|||)~

2/19
前へ
/20ページ
次へ
川に来て漁を始めた茶々丸はため息を吐く。 「もっと稼ぐことができたらなあ…ん?」 何度か網を入れた頃、ふと見た少し離れた岸辺に見慣れない影が見える。 目を凝らしよぉく見てみると、それは川からやっと上がってきたような笠を被った人ではないか? 慌てて網を置き岩場を軽やかに跳びはね駆け寄る。 「おい!おめえ、大丈夫か?」 抱き起こすと川に浸かっていたせいか、青白い顔に唇は紫色になっている。 「うわ…体が濡れて冷てぇ~…目を瞑ってねえでしっかりしろ!」 声を掛けるが、細身の体のその人は、か細い呼吸を繰り返すだけで意識は戻りそうにない。 茶々丸は自分より大きなその人を軽々と抱き上げると、急いで自分の家へと連れ帰った。 それからどれくらいの刻が経ったか… 黄昏時にあたりが暗くなった頃、その人はゆっくり目を開けた。 布団から出ているその顔は、頬はほんのりと赤く、唇も先程よりは紅がさし、赤く色づいた木の実のように変わっている。 「気がついたか?今、あったけえもん作ってっから。すまねえな…何もねえから、大根汁くれえしか作ってやれねえけど、今は我慢してくれや」 ぼんやり茶々丸を見る黒い目に、茶々丸はニコリと微笑む。 「さっきよりうんと顔色がええぞ。けど、どうだ?痛いとこや苦しいとこはねえか?」 ぼんやりした目のままだが、言っていることはわかっているのか、フルフルとゆっくり首を左右に振る。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18人が本棚に入れています
本棚に追加