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川に来て漁を始めた茶々丸はため息を吐く。
「もっと稼ぐことができたらなあ…ん?」
何度か網を入れた頃、ふと見た少し離れた岸辺に見慣れない影が見える。
目を凝らしよぉく見てみると、それは川からやっと上がってきたような笠を被った人ではないか?
慌てて網を置き岩場を軽やかに跳びはね駆け寄る。
「おい!おめえ、大丈夫か?」
抱き起こすと川に浸かっていたせいか、青白い顔に唇は紫色になっている。
「うわ…体が濡れて冷てぇ~…目を瞑ってねえでしっかりしろ!」
声を掛けるが、細身の体のその人は、か細い呼吸を繰り返すだけで意識は戻りそうにない。
茶々丸は自分より大きなその人を軽々と抱き上げると、急いで自分の家へと連れ帰った。
それからどれくらいの刻が経ったか…
黄昏時にあたりが暗くなった頃、その人はゆっくり目を開けた。
布団から出ているその顔は、頬はほんのりと赤く、唇も先程よりは紅がさし、赤く色づいた木の実のように変わっている。
「気がついたか?今、あったけえもん作ってっから。すまねえな…何もねえから、大根汁くれえしか作ってやれねえけど、今は我慢してくれや」
ぼんやり茶々丸を見る黒い目に、茶々丸はニコリと微笑む。
「さっきよりうんと顔色がええぞ。けど、どうだ?痛いとこや苦しいとこはねえか?」
ぼんやりした目のままだが、言っていることはわかっているのか、フルフルとゆっくり首を左右に振る。
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