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~臭い中にも花は咲く(´A`|||)~
深い深い山奥の、裕福とは言えない小さな村に、早くに家族をなくし独り暮らしの若者がいた。
マルカメムシの茶々丸。
家業と言えば聞こえがいいが、先祖伝来の小さな田畑で作物を作る村一番の貧乏な百姓だ。
どんなに頑張っても到底それだけでは食ってはいけず、山を越え谷を越え町へ川魚や薪を売りに行ってはどうにか暮らしていける毎日。
村の若者達は嫁さをもらい次々に所帯をもっていくが、貧乏な若者が嫁さをもらえるわけもない。
優しく働き者で皆に…特にお年寄り連中に好かれており、『茶々丸や』『茶々丸よ~』と、可愛がられてきた。
だが村の若者の中でも、痩せた小さな体にさして見映えも良くはない茶々丸を、村の若い娘達も嫌いではないが好いた対象にはならないようだった。
「茶々丸よ~、おめえもそろそろ嫁さを世話してやっか?」
その日、川に向かう茶々丸を見つけ、お年寄り連中が独り身を案じ声をかけた。
「ありがとうな。けど俺一人、食ってくのがやっとの甲斐性なしだからな。嫁さまでなんてとても無理だぁ。あははははっ…」
と、あっけらかんと笑い飛ばす。
「村一番のええ若者なのにな…」
年寄り連中はどうにもできない歯痒さを嘆きあった。
「こればっかりは仕方ねえこった。それに独り身の方が、気楽だし自由でええわ」
されど口ではそう言うてみても、茶々丸とて年頃の男…
本当は皆のように嫁さを欲していた。
「嫁さかぁ…俺のような貧乏な百姓が嫁さを貰ったって、苦労を掛けるに決まってる。嫁さが気の毒だ」
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