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考えている。想っていることをどうやって証明すればいいのか。
こんなことは陳腐であると分かってはいても、こうやって自分には恋人がいて、それでこうしてこの売り場にいるのだと。それはもしかしたら男なのかもしれないと周囲から憶測されるような行為をすることで、自分の学への想いを証明しているのだ。
俺は学の存在を恥じてはいないし、恥じることもないのだと。
沢山のチョコレートの中から、学に相応しいチョコレートを探すのは案外楽しいと気がついた。
売り場は混んでいたけれど、鳩達は鴉である俺を遠巻きにしていたから、順調にショーケースの中を確かめることが出来た。
粒になったチョコレートはどれも同じように見えて、男が喜ぶようにというよりは、女が喜ぶように出来ているように見えた。綺麗に表面だけを飾りつけたそれを、自分の容姿を気にする学に与える気にはならない。
叩くと割れて、化石が出てくるチョコレートや、動物の形をリアルに形どったチョコレート、工具の形をしたチョコレート。
俺はそれらを吟味しながら売り場をうろついた。
ショーケースの中にそれを見て、おやと思った。
派手なチョコレート達の中で、それはいやに地味にショーケースの中にいたからだ。
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