【番外編】猫の舌

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 小さな箱の中に整然と並べられたチョコレート。  猫の舌を模って作ったとされる7~8センチのチョコレートは薄く、両側が少し膨らんだ形状になっていた。表面にはメーカーの刻印があって、箱にはチョコレートを咥えた猫の絵がある。  俺はゆっくりと微笑んだ。  玄関の鍵はかかっていなかった。  危ないと何度か言っているのだが、むさいおっさんなんか誰が襲うんだと取り合って貰えなかった。そのうち、不意打ちで襲って教え込もうと思っているのだが、どうにも学の泣き顔には弱くて実行出来ずに居る。 「ただいま」  靴を脱ぎながら言うと、足音が聞こえて学が近づいてくる。 「おかえり」  何かあった時の顔だなとじっと見ると、学の顔が赤らむ。 「あ、あの……」  学が恥ずかしそうに俯いた。  開いたリビングの扉から、いつも通りに美味そうな飯の匂いがする。  その中に微かに甘い匂いを感じた。 「け、ケーキ作ったんだ。ば、バレンタインだし……」 「いいね。これは俺から」  高級な百貨店の袋を見て、学の顔が驚きで固まる。 「え?え?お、おれに?」 「うん」 「わ、わざわざ?誰かから貰ったとかじゃ……」
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