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心底困った顔をした学がおずおずと舌を出して、俺の舌を舐める。
俺の舌の温度で溶けてしまった猫の舌は一舐めくらいでは掬い取る事は出来なくて、それに気づいた学が舌を何度も舐める。
「ん……」
漏れた声にくすりと笑うと、学がびくりとして俺を見る。
「おいしい?」
離れてしまった学に問いかけると、赤くなった顔がうんと頷く。
「もっと?欲しい?」
チョコレートの箱に伸ばした手を、学の手が押さえる。
「……す……て」
「なに?」
ぐっと堪えた顔が堪らないと思う。
ぱくりと開いた口が、何も言えずに閉じる様も。
俺は学が心から望んだことを一度も断ったことがないのに、それを知っていてなお、学はこうやって望みを口に出すことを躊躇う。
そして、俺は、学の望みが何であるかを知っているけれど、こうやって待っている。
俺は学を見ているのが、心底好きなのだ。
そして、学はそれを知っている。
学が助けを求めるようにちらりと俺を見た。
「どうしたの?」
上機嫌で微笑む俺に、観念したように学は溜め息をつく。
「き、キスが……したい」
「どんなのがいいの?」
「し、しってるよな?」
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