第1章

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リューマが、隣にいなければ、 ミユキを胸に抱き締めたかった。 それぐらい、腹を空かせたオレにわざわざ料理を持ってきてくれたミユキの気持ちが嬉しかった。 「一人で家から一歩も出てないと思ったから、連絡しないで来ちゃったよ」 「彼女がいたらどうすんの?って言ったんだけどさ」 リューマが横から言葉を投げる。 「彼女は、両親と過ごすってヨシが言っていたから。一人だと思ったんだ」 「………ん。さんきゅ」 そうだった。 そうゆう事になってたの忘れてた。 「せっかく来たし、上がってく?アルコール以外出せるモノないけど」 「ううん。もう帰るよ」 ミユキは頭を横に振ったけど 「いや、せっかく来たからお邪魔させてもらおう、ミユキ!」 リューマの長い足が玄関の中へ入ってきた。 「リューマ、疲れてないの?早くウチに帰りたいってココに来る前はゴネていたのに」 ミユキが怪訝な顔して、リューマを見る。 本当にリューマ、お前がお邪魔虫だよ。 心の中で毒づいたけど、心底憎めないヤツだから、呆れた溜め息しか出てこない。 それより、腹が減っていたから ミユキの持ってきてくれたタッパを取りだして早速開ける。 「うまそう」 色とりどりにオコワや栗きんとん、筑前煮、昆布巻きなどが詰められていた。 「二人は食ったの?」 「うん、食べた」 リューマが呑気に人ん家のソファでくつろぎながら答える。 オレはコタツの中に入り、箸をつかんで早速のご馳走を頂く事にした。 「ヨシ、まだ彼女は家に連れて来てねーの?」 リューマは視線をあちらこちらに飛ばしながらそう口にした。 女の気配を探ってる様子を見て、 リューマは、それを確認したかったのかと 心ん中で納得した。 「ココは滅多に人を上げないから」 「………ふぅん」
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