第1章

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須田家に行く時間になると、リューマは二日酔いから復活して、新年気分に浸りながら、実家に電車で向かった。 「車、やっぱり欲しいな」 「……うん。でも、ハワイ旅行に行くまで我慢しよ?」 初詣の帰りか、破魔矢を持った人や着物を着ている人が電車の中で多く見られた。 「初詣も行きたかったな。車があった方が動きやすいよな」 「初詣は車では行かないでしょ。特に都内では」 「そうなの?」 私の実家は千葉のもっと下った場所だった。 だから片道1.5時間かかってしまい、早めに出たけど、着いたのは7時くらいになってしまった。 須田家の玄関の脇にある門松を横目に見ながら呼鈴を鳴らすと、 バタバタと元気のいい足音が聞こえた。 玄関の扉を開けてくれたのはメイッコのユキちゃんだった。 「ママー!!! ミユちゃんとリュウだよ!!!」 5才になったばかりのユキちゃんは興奮気味に顔を赤らめて、姉のユカリを呼んだ。 「ミユキ遅かったね! キャー、リューマさんお久しぶりです!」 4つ上のユカリも興奮気味に顔を赤らめて「どうぞどうぞ」とリューマだけにスリッパを用意した。 ま、いいんだけど。 自分ん家だし。 リューマは異世界にいた人だから、私たち家族にしてみれば、超VIPなお客様には変わりなかった。 居間には須田家の親族が集まっていて、私とリューマが足を踏み入れると、ワァーッと歓声が上がった。 「リューマさん、相変わらず男前!」 姉の旦那さんが一声を飛ばす。 「リューマさん、どうぞどうぞ、遠いところからわざわざ来て頂いてありがとうございます」 母親も頬を赤らめて、頭を下げる。 父親も、足を崩していたのを座り直した。 こんなフツーの一般家庭に足を運んでもらって恐れ多いとでも言いたげな雰囲気の須田ファミリーは、みんなかしこまっちゃって、 私は内心苦笑いをした。 私なんて眼中にないカンジ。 芸能人なんて、過去の事であって 今はいたってフツーの人なのにね。 「リュウ、リュウ、一緒に遊んで!」 ユキちゃんはリューマに数回しか会ってないのにだいぶ なついていた。 「いいよー、何して遊ぶ?」 リューマは顔を綻ばして、ユキちゃんを膝に乗せた。 リューマのユキちゃんを見る眼差しが優しくて、そんなリューマにホッコリしてしまう。
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