第1章

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「ユキ!リュウお兄さんは今遠い所から来たばっかりなの。膝から降りなさい!」 「イヤー!」 ユキちゃんはリューマの上着のニットをつかんで、母親のユカリの手から逃れようとしがみついた。 「いいんですよ。僕が遊びたいんです」 リューマはフワリと笑ってユカリを見ると、ユキちゃんに向き合って 「何して遊ぶ?」 と頭を撫でた。 「リューマさん、すみません……」 ユカリが申し訳なさそうに言うのを横目で見てリューマは「いいんですよ」と目を細める。 「にらめっこ!」 「うわぁ、にらめっこか。懐かしいな」 「だるまさん、だるまさん、笑ったら負けよ、チューするよ、あっぷっぷ!」 ユキちゃんがプゥっと頬っぺたを膨らました。 リューマもそれにつられて頬を膨らませる。 「なに?チューするよって」 つい、ユキちゃんの言った事が可笑しくてユカリに訊いたら、 「ジジがそう言ってユキと遊ぶのよ。それで、ジジはキスする口実にしてるの。 半ば強制キスごっこね」 苦笑いして、ユキちゃんとリューマを見ている。 リューマは美形な顔を一生懸命崩してゴリラのヘン顔を作っていた。 ユキちゃんも鼻の穴膨らまして白目を剥いている。 見てるこっちが可笑しくて、プッと吹き出してしまう。 リューマのゴリラ顔初めて見た。 なんて美しいゴリラだろう。 ユキちゃんの方が、だいぶヤバめの顔になってる。 それでもまだ成敗がつかない。 リューマは、ゴリラ顔から、アイーン顔になって、舌をペロペロ出し始めた。 「プッ」 もうダメ!!!! リューマの顔、超ウケる!!!!!! 私がクックッと笑ってしまったら 「ミユキー、笑うなよ。こっちは真剣勝負してるんだから」 リューマがヘン顔のまま私を睨んだ。 そしたらユキちゃんがリューマの袖を引っ張って、見てみてと自分のヘン顔をリューマの顔に近づける。 ユキちゃんは舌を出して鼻にくっつけた。 「ぷはっ」 リューマがケタケタ笑い出した。 「リュウの負け-!」 「負けたー、ちくしょー」 「リュウ、負けたから、チューして!」 「いいよ! チュッ!」 リューマはユキちゃんの肩をつかんで、頬っぺたに派手な音をたててキスをした。 「ちーがーう! お口にするの!」 ユキちゃんは頬を膨らませて口を尖らせた。
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