第1章

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「………………」 「ユキ! な、何言ってるのっ?! ジジ……!?」 ユカリが父親を仰ぎ見ると 「オレはそんな事してないぞっ」 ジジは焦った様子で、顔を赤くさせながら疑惑を否定した。 「父親のオレにでさえそんな事を言わないぞー」 ユカリの旦那がジドーとした目を向ける。 「お口にチューしてほしいの!」 ユキちゃんがリューマの首に手を絡めて足をバタつかせた。 結構、本気でリューマにキスをせがんでいる。 ………なんてオマセなんだろう。 内心苦笑しながらも、メイッコとは言え、さすがに夫の唇をやすやすとは差し出せない。 リューマもそればっかりは本当の父親がいる手前、困惑して苦笑いしていた。 「もう、いい加減にしなさい!」 ユカリがユキちゃんを抱き上げた。 「うえーん、リュウにチューしてもらうのー」 リューマって5才の子にまで魅了してしまうなんて………恐るべし。 「リューマさん、お酒何呑まれます?」 お母さんが泣き叫ぶユキちゃんを遮るようにリューマに飲み物を訊いた。 「焼酎のお湯割りでいいです」 「どうぞ、料理も遠慮なく召し上がってくださいね」 「ありがとうございます」 リューマは、軽く会釈して、目の前のテーブルに置かれている箸をつかんだ。 「ウチの家庭ではお正月にこんなご馳走でないから、目移りするな」 リューマは取り皿を手に取り、料理に箸を伸ばした。 「それにしても、ユキちゃんのキス攻めは凄かったね」 「オレとしてはチューしてあげたかったんだけどね♪」 リューマは、キュウリと、イクラが挟んである蒲鉾をパクッと口の中に入れた。 「ロリコン!私が許さないんだから」 私は頬を膨らませて 筑前煮を取り皿によそって口に運んだ。 母親が焼酎のお湯割りを運んできたところで、 「では、ミユキさんとリューマさんも揃ったところで、改めて新年のご挨拶をしたいと思います。祝盃を御手にお願いします。」 みんなが飲み物のグラスを手に取ると、義兄がしきって挨拶をした。 「新年、明けましておめでとうございます!」 「「「「「「「かんぱーい」」」」」」」
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