第1章

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『おばさんに最近会ったら近況を聞かれて、彼氏と別れた事を話したの。 そしたら、うちの義一はどう?って目をキラキラさせて言われて。 長い事東京にいるし、遊びに行って観光案内してもらったら?って薦められたから、そうする事にしたよ。 だからよろしくねー! 発散させないと、病みそうなんだよね、今。 彩佳』 お互いこの年で失恋の痛手は深くて、 次に進めない状況なのかもな。 オレも仕事ばかりで今までやってきたし、息抜きがてら、彩佳と過ごすのも悪くないかもしれない。 正月2日間、一歩も外に出ず、冷蔵庫にある食べられそうな食いもんは食い尽くし、 ボサボサの頭を掻きむしる。 「腹減ったな………」 朝からコーヒーしか飲んでないオレは、 夕方、空腹が襲ってきて、冷蔵庫をおもむろに開けたけど、やはり何もない。 最近は自炊していなくて ほとんど外食やスーパーのお惣菜でまかなっていたから、冷蔵庫には飲み物くらいしか残っていなかった。 スーパーに何か買いに行くか? でも、正月だからまだ閉まってるかもな。 「………………」 侘しいけど、 カップラーメンでも食うか。 大晦日に、リューマにご馳走してもらったイタリアンをたらふく食べておいて良かったな。 そう思っていた頃、 アパートの呼鈴ブザーが鳴った。 誰だろ? 玄関のドアに近づいて ドアスコープで来訪者を確認してみれば、 どうゆうワケかリューマが向こう側から顔を近づけて笑顔でピースしている。 なんでリューマがウチに来るんだ? 脳内がクエスチョンだらけのまま、玄関の扉を開けた。 「よっ!」 目の前に立っていたのは、新年早々チャラそうなリューマと 安心する笑みを投げかけるミユキだった。 「お正月、美味しいもの食べてないんじゃないかと思って差し入れ」 ミユキは紙の手提げ袋をオレに差し出した。 中身を覗けば、料理が入っている様子のタッパが入っていた。 「今実家から帰ってきたところなんだけど、おせち料理のお裾分け」
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