Baby Bomb~すり鉢姫・薫~

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 滝本は額に片手を当てながら嫌そうに、湯浅、私を疑うのは止めてくれ、と答え、飯田さんは無表情を引きつらせて私は知りません!!と叫び、誉田君は、俺は彼女すら居ないっすよ!!と絶叫していた。  完全に傍観者のあたしはそれが面白くてつい笑ってしまう。あははは、面白い~。皆不審だわ~って。  湯浅女史がまた重いため息をついた。 「・・・・・・皆さんに覚えがないとすると、私も産んだ覚えはありませんからやっぱり捨て子でしょうね。こういう場合はどうすればいいんでしょうか。警察?保健所?病院?」  誉田君が口を挟む。 「修道院じゃないですかねえ!」 「誉田、ここら辺には修道院はない」  飯田さんが冷たい声で突っ込んでいる。滝本は腕を組んで、全員の視線集めてすやすやと快眠中の赤ちゃんを見下ろしていた。  ・・・・そんな睨んだら起きるんじゃないの?穴が空くよ、赤ちゃんに。あたしは心の中で思った。  皆の視線がここの長である滝本に集まる。彼はいつもの愛想の良い外面は微塵も見せずに眉間に皺を寄せたままでぼそっと言った。 「・・・警察、だろうな」  全員で重いため息をつく。朝っぱらから全く、なんてことよ、これ!!畜生、親、出てこーい!!きっと皆同じことを思っていただろう。  忙しくないときだとは言え、この子を拾得物として警察に届けるのは非常に気が重い仕事だ。何だって自分達がこんな目に!?と叫びたくなる。だって生きてるんだよ、この子!!  湯浅女史が言った。 「・・・とにかく、この子が寝ている内になんとかしなきゃなりませんね。目が覚めたら最後、恐らく新生児近いこの子をどう扱えばいいかは私は判りません」  その言葉を聞いて、全員でぞっとした。そ、それは確かに困る~!!だってここにいるのは見事に独身者ばかり。それも一人暮らしが年季入ってそうな一癖も二癖もあるような人間ばかりなのだ。無理無理!赤ちゃんの相手なんて出来ないよ~!!  そう思ったからか、飯田さんがパッと受話器を取ってダイヤルを始めた。ここぞとばかりに誉田君が逃げようとして滝本に捕まっている。  伸ばした腕で文字通りの首根っこを引っつかまれて、誉田君は上司を見上げた。
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