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1.臆病なショコラ
『なんだよ急に。
そっちから誘っておきながら、
いざホテルに行ったら、わめくって。
邪魔くせぇー。
お前みたいなブス、誰か遊び以外で相手するかよ』
ずっと焦がれつづけてた憧れの先輩。
中学・高校とずっと片想い。
先輩の傍には、いつも綺麗な女の子たちが集まっていて
朔斗【さくと】先輩は、私にとって別次元の人だった。
そんな朔斗先輩と再会したのが、社会人になって
部長のお供で出向いた打ち合わせ会場。
朔斗先輩は、
取引先の担当者としてその場に顔を出した。
「あっ、君は?」
「なんだね。
佐久本【さくもと】君は、湯浅【ゆあさ】君と知り合いかね」
驚いたように私の顔を覗く部長。
「沖本さん、佐久本杏璃【さくもとあんり】さんとは、
中学・高校と同じ学校だったんです」
「そうか……世の中は狭いなぁ」
打ち合わせが始まると、朔斗先輩は鞄から取り出した書類をテーブルに広げて
部長と本格的に話し始める。
私はと言えば、書類に視線をうつすフリをしてチラチラと
朔斗先輩ばかりを見ていた。
指先を捉える視線は、彼の薬指を追いかける。
指輪は……ないっ。
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