5157人が本棚に入れています
本棚に追加
/572ページ
「おかえり」
そう賢吾に言われたとき、一週間も住んでない部屋なのにひどく懐かしい気さえして、胸にぐっとくるものがあった。
その気持ちを表にだすことはできなくて、
「ただいま」
と小さく返事をして、リビングへ向かう。
バルコニーへと続く大きな掃き出し窓から、冬の陽光が差しこんでいる。
吸い寄せられるように窓際まで歩き、レースのカーテンを開けた。
冬の空気は澄みわたっていて、建物や木々の輪郭をくっきりと切り取っている。
左奥に見える川面の、光をキラキラと反射させる様子は美しく、ガラス越しの日差しはほんのりとあたたかい。
最初のコメントを投稿しよう!