7.落下

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「なるほど」 オシャレに気を使っているのだと思っていたけど、実生活で一番楽なヘアスタイルなのか。 賢吾はマッサージをするみたいにして、髪と地肌に触れながら乾かしてくれる。 その心地よさに目を閉じて、しばらくのあいだ身を委ねる。 耳の後ろのあたりからうなじにかけて、温風をあてながら指の腹で掻くようにされると、眠りを誘うようなやさしい痺れにじんわりと包まれる。 気持ちいい・・・・ 夢見心地で、はぁ、と小さく息をつく。 指通りが軽くなったのを感じるのとほぼ同時に、ドライヤーの音が途切れる。 賢吾の指で髪をかき混ぜるようにして撫で回されると、意識がトロリと溶解し夢と現実のはざまに落ちてゆく。
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