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「……なんでもないわ……」
おかしいのをこらえるように、首を振る。
尚斗は「オレなんか変なことしたかなー」と、首を傾げている。
(ずっと…こうやって側で、見つめていられたら、いいのに)
いつか、尚斗から離れなくてはならないときが、くるかもしれない。
いや、それ以前に、彼のほうから瑤子を、敬遠する日がくるだろう。
そう遠くない未来に。
つかんだシャツに力をこめる。
───自分は、ずるい人間だ。
最後の最後まで…この手を離そうとはしないだろう。
彼から、振りほどかれるまでは。
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