第七章:束の間の幸せ・前

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「……なんでもないわ……」  おかしいのをこらえるように、首を振る。 尚斗は「オレなんか変なことしたかなー」と、首を傾げている。 (ずっと…こうやって側で、見つめていられたら、いいのに)  いつか、尚斗から離れなくてはならないときが、くるかもしれない。 いや、それ以前に、彼のほうから瑤子を、敬遠する日がくるだろう。 そう遠くない未来に。  つかんだシャツに力をこめる。 ───自分は、ずるい人間だ。 最後の最後まで…この手を離そうとはしないだろう。 彼から、振りほどかれるまでは。
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