第七章:束の間の幸せ・前

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(私の過去を知ったら……あなたは、どうするの……?)  この前あんな風に決意したばかりなのに、瑤子の心は、まだ、揺れている。 話さなくて済むのなら、きっと一生、黙っていくはずだ。 (だって……失いたくないもの)  なにげなくこちらを見た尚斗が立ち止まる。 「具合でも悪くなった?」  気遣うように言われて、あわてて笑う。 「あ……人混みって、苦手だから」 「確かに、ごちゃごちゃしてるよなー。 おまけに暑いし」
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