54人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
1.
生徒の大半が、夏服から中間服に袖(そで)を通し始める十月の初旬。
瑤子(ようこ)の通う高校の文化祭は、毎年その頃に行われていた。
今年も例年通り、年に一度のお祭り騒ぎは、異常に盛り上がる者と
それを冷めた目で見る者とに、はっきり分かれていた。
瑤子の所属する美術部は、ひと教室を借りて、展覧会を開いた。
皆、あわてて短時間で仕上げた作品を提出する者が多かったが
瑤子は、春先から丹念に仕上げた紫陽花(あじさい)の油絵と、夏休み中に描いた仔猫の水彩画を、出展した。
最初のコメントを投稿しよう!