第七章:束の間の幸せ・前

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「瑤子さんっ。 あれ、見たっ!?」  サッカー部の催し物である屋台焼きそば店で、焼きそばを作っていたはずの尚斗(なおと)が 瑤子のいる作法室に、いきなり飛びこんできた。  人手不足だから、と、クラスメイトに頼まれて、茶道部の茶会を手伝っている真っ只なか。 瑤子は、浴衣の裾を気にしながらガラリと開けられた扉へと近寄った。  室内の注目を一点に集めてしまい、尚斗は気後れしたらしい。 廊下の壁に背を預け、瑤子を待っていた。 エプロンのポケットに両手を入れて。
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