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そんな事を思い出してしまったのが、つい最近だったというのに……
その初めての相手が、再び私の前に現れるなんて……どういう事?
しかも結婚していて、それは私もだけど……ううん。お隣さんって?
悪い夢にしか思えず、喉が塞がってしまったみたいに声が出なかった。
「あがってもらったら?」
奥から現れた主人が、営業マンらしい爽やかな笑顔で新しい隣人達を我が家へ招こうとしている。だが元カレの奥さんは、遠慮がちに私を見た。
「どうぞ」
ああ、私のバカ! 思いっきりスマイルで迎え入れてしまった!
「では御言葉に甘えて」
元カレの声。懐かしくて胸が締め付けられる。
「あの……これ、つまらないものですが……」
「お気遣いいただき、ありがとうございます」
かいがいしく客用スリッパを並べ、二人を案内する主人に対し、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
「あなた、御礼を。私はお茶を用意するから」
「わかった」
リビングの扉の側に立つ主人にいただいた挨拶の品について伝えると、逃げる様にキッチンへと向かった。
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