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こんなドラマみたいな展開、あるの?
「もしかして夢、とか?」
空笑いすると手元が狂ったのか、カップに注ごうとしていた紅茶が跳ねる。
「あつっ!」
それでもポットを落とさぬ様に手を引っ込めたのは、これが夫婦で選んだ初めての物だったからだ。
「手伝おうか……って、大丈夫?」
「う、うん……」
不意に現れた主人が心配そうに私の指を見てくれる。そっとポットを置きながらも、心臓が早鐘を打ち、口から飛び出してしまいそうだった。
「お手洗い、お借りします」
「あ、その先です」
キッチンへと続く廊下に立つ元カレの前で、主人が私の指を舐めている。
「はい。もう痛くないでしょう?」
無邪気な笑みに、いてもたってもいられなくなる。
「俺、運ぶよ」
「ええ。お願い」
いつもの光景なのに、何かがずれていく。
「仲、いいんですね」
「いやぁ……はは。お恥ずかしい」
用を済ませた元カレと主人が連れ立ち、去って行く。
「何なの……これ……」
こんなんじゃ身が持たない。
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