79人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「おはよう」
まだ眠っていたかった。しかし朝食の支度をしなければと、微睡みそうな自分を奮い起こした。
「珍しく激しかったね」
「……え?」
頬にあたる胸板。確かな温もりに視線を上げる。
ついばむ様なキスをされたが、驚きで息が出来なかった。
「どうしたの?」
「ううん……おはよう」
私は裸だった。そして、主人の腕の中にいた。
全く記憶がない。いつの間に抱かれていたのだろうか?
「もう一回、していい?」
「ちょ……仕事でしょう?」
「今日は直行だから、ゆっくり」
いつもなら嬉しい知らせなのに、胸がざわめく。罪悪感。
するりと体を反転され、容易く組み敷かれる。カーテンの隙間から射し込む光が、朝を告げている。
甘い声を上げてしまう。吐息が零れ、何も考えられなくなる。
「すご……こんなになってるよ……」
いつもの生活空間に卑猥な音が響き続ける。
主人に抱かれながら、私は元カレを思っていた。
主人に元カレを投影し、あの頃を思い出していた。
最初のコメントを投稿しよう!