隣人

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 専業主婦になる事を望んだのは、主人だった。  パートでもいいから働きたいと思ったが、子供を授かるかもしれない事を考え、双方の両親の支援もあり、私は会社を円満退職した。  かといって、自宅でぼんやりしている訳ではない。幼い頃から好きで、趣味として続けていた手芸を活かし、小物やマスコットをネットで販売している。 「いってらっしゃい」  男女の仲って不思議だ。ほんの数時間前まで、あんなにも恥ずかしい事をしていたのに、共に朝御飯を食べ、笑って出かけて行き、それを見送ったりする。 「おはようございます」 「おはようございます」  隣から声をかけられ、どきりとする。こういった状況に、まだ慣れていない証拠だ。今までなかった御近所付き合いが、これから始まるのだ。 「御主人。今から、お仕事なんですね」 「あ、いつもはもっと早いんですけど、今日は直接、取引先に行くらしくて」  二軒を隔てるフェンスを挟み、元カレの奥さんと立ち話。  シュールすぎて、目眩がする。 「そうなんですね。じゃあ、うちの主人が通勤を御一緒する事もあるかもしれませんね」
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