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7月21日
隆は自分の部屋でメールの確認をしていた。一週間前に隆之助へ送ったメールの返信がまだきていなかった。隆之助はまめだったため、メールも頻繁に返してくれていたし、隆が送ったメールの返信に3日を過ぎたことは一度もなかった。だが、今回はもう一週間も経っている。もしかすると隆之助の身に何か起こったのではないかと、隆は心配していた。
秀樹ともここ一週間まともに会話をしていない。秀樹が隆を避けているのは明らかだった。
隆は、最近何か不吉な予感を感じていた。何か良くないことが起こるのではないか。そんな気がしてならなかった。
7月31日
隆は智子と一緒に、自分の通っている高校へ行った。8月中にはソーティング・プロジェクトにより、アメリカへ行かなければならないため、3学期からは学校へ行けなくなる。そのため隆は学校を退学しなければならなかった。その手続きをするために智子と一緒に高校へ赴いた。
先生は隆がいなくなることを寂しく思うし、おそらくクラスのみんなも同じ気持ちだろうと言った。また、隆がusefulnessに選ばれたことを誇りに思うとまで言っていた。
隆はそれを聞きながら、よくもまぁ、思ってもいないことをこんなにもしみじみと言えるものだなあと感心しながら聞いていた。
隆はこの学校と別れることを別に悲しいだなんて思っていなかった。学校が嫌いなわけではなかったが、これといって思い出もなかった。唯一寂しいことといえば、これからもう孝雄とのめんどくさい登校時間の絡みがなくなることだった。
孝雄は先生にクラスのみんなによろしくを言っておいてくださいと、最後のあいさつをしてその場をさった。
昇降口のところでたまたま部活にきていた孝雄に出くわした。孝雄ははにかみながらこっちを向いて一言こう言って、去って行った。
「I'm proud of you !」
クラスで一番英語ができない孝雄がかっこつけて言ってきた。隆ははにかみ返すことしかできなかった。
さっきの先生の言葉よりもよっぽど心にしみた。
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