佐藤 隆

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8月3日  7月14日以来、隆之助からの返信がないことを隆は心配していた。智子に隆之助の連絡先を聞いてみたが、その電話番号はすでに使われていなかった。  今日は今までにない夏の暑さだった。それも湿気でじめじめとした、とても不快な暑さである。    秀樹はベランダで夏休みの課題をやっていた。秀樹は最近家にいることが多い。  「恵美見なかった?」  智子が恵美を探していて、隆に聞いてきたが、隆は知らないと答えた。    隆は冷凍庫からアイスを2本とって、秀樹のいるベランダに行った。1本を秀樹に渡すと、秀樹は小さな声で〝ありがと″と一言だけ言って、袋を開けた。  アイスを食べながら隆が言う。  「夏休みの課題は順調か?なんなら俺が教えてやるぜ」  アイスを食べながら秀樹が答えた。   「いいよな、兄貴は。どーせアメリカに行くから、もう課題もしなくていいんだろ。」  「課題はしなくていいが、こっちの方が断然大変だぜ。」  「無能なおれよりも、有能なusefulnessの自分の方が世界に貢献しなくちゃならないからよっぽど大変だってことか?」  秀樹の声のトーンが変わった。  「そんなこと言ってないだろ。ただアメリカに行くのが大変だってことだ。」  「uselessnessのお前らはどーせ役に立たないから、どーぞ地球で気ままに生きて死んでくださいってことだろ、後は我々usefulnessが人類の未来はなんとかしますからって。」  「どうした、秀樹。お前少し被害妄想が激しんじゃないか。」  「被害妄想だって?!こっちはもうお前がusefulnessだってことだけで被害被ってんだよ。お前にわかるかよ。自分の兄貴がusefulnessで自分が無能なuselessnessだっていう弟の気持ちがよ。こっちは自分のすべてを否定されたような感じだぜ。いったいおれらはどこで違えたんだよ。母親も父親も一緒だってのに。おれはもともとできそこないだったってことか。説明しろよ!なぁ、兄貴。俺らはいったいどこで違えた!」
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