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8月5日
隆は朝から秀樹がいないことに気付いた。まだ朝の7時だというのに秀樹はどこにもいなかった。智子にはとても言える状態ではなかったので、隆は達徳に言った。達徳は気持ちを整理するために散歩にでも行ったのだろうと言った。
隆は昼間の内に何度も隆之助からのメールがきていないか確認したが、いまだに隆之助からの返信はきていなかった。
恵美が死んでからの2日目が終わろうとしている午後8時だった。夕食はもう食べ終えたが、まだ秀樹は帰ってきていない。
9時を過ぎたので達徳は秀樹を探しにいったが、11時を過ぎても見つからず、警察に捜索を依頼した。
恵美の死に、秀樹の失踪。いろんなことが起こりすぎていて隆も気が滅入りそうになっていた。
8月8日
秀樹が失踪して3日になるが、まだ秀樹は見つかっておらず、どこへ行ったのか手がかりさえも掴めなかった。
1つわかったことは、ソーティング・プロジェクトによりスキャニングを受けるため、市役所に行ったときにもらった、usefulness用のアメリカ行きのチケットの恵美の分がなくなっていたのだ。
出発の予定日より一週間早かったが、隆は今日アメリカへ向けて出発することを決めていた。
車で空港を目指した。達徳が運転して智子も一緒についてきた。車の中では過去の思い出話で悲しくも過去を振り返った。
空港についてからは智子も達徳もあまりしゃべらなかった。検問所の前で隆が順番を待っているときに、智子はこんなことをつぶやいた。
「私は今日からすべてを失うのね。恵美も秀樹も隆も。これから私は何を楽しみに生きていけばいいのかしら。」
隆が答えた。
「きっと秀樹は恵美の分のチケットを使ってアメリカへ飛んだんだ。なぜかはわからないけど、きっと秀樹はアメリカにいるはずだ。向こうで秀樹を見つけたら一緒に連れて帰ってくるよ。だから母さんは僕らが帰ってくるのを楽しみに待っていてくれ。きっと僕らはすごいことを成し遂げて帰ってくるから。」
「それじゃあ、楽しみに待ってるわ。」
そう答えた智子の目には涙があふれていた。
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