佐藤 隆

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 孝雄は別の話を持ち出してきた。  「おい、ニュース見たかよ。3日後からここでもいよいよソーティング・プロジェクトが始まるんだってよ。なんか緊張するな。もし自分が「usefulness」だったらどうする?火星に移住できるんだぜ?」  「そんなわけないだろ。だいたい火星に移住できるのは全人類の4分の1らしいぜ。お前ははその4分の1に選ばれる自信があるのか?」  孝雄は笑いながら答えた。  「このありとあらゆる才能に恵まれた俺様が選ばれないわけがねーだろ。心配するな。火星に行っても、月に一回は手紙を書いて送ってやるよ。」  「心配せずとも、お前が選べれるくらいなら、おれも選ばれてるよ。」  2人がこんな話をして笑ってるうちにバスは学校についた。  朝よりは涼しく、少し気持ちのいい風が吹く夕方。隆は学校前のバス停で帰りのバスを待っていた。バス停までいろんな部活動の声が響いてくる。バスを待っているのは隆を含め全員帰宅部の3、4人だった。  バスがきて全員それに乗ったが、バスの中は朝よりも人がすくなく静かで、落ち着いた雰囲気だった。朝一緒だった孝雄もこの時間はまじめに部活動に励んでいる。  終業式での校長の話は孝雄が言ったように長く、苦痛でしかなかった。1年生では女子生徒がひとり貧血で倒れた。隆は孝雄の言うこともたまにはあたるのだなと少し感心しながら、バスに揺られていた。  家に帰りつくと智子は夕食の準備をしていた。隆はにおいで今日の夕食はカレーだとすぐわかった。  連日テレビでは食糧不足の問題がとり上げられているが、隆はこの家族の食卓ではそれを感じたことがない。みんなその日の食事に満足している。 野菜や肉、魚の値段が日に日に高くなっているが、おそらく医者である達徳ががんばって稼いでくれているおかげだろうと隆は達徳に少しは感謝していた。経済面に関してこの家族は困ったことがない。    ちょうどカレーが完成したところで秀樹と達徳がほぼ同時に帰ってきた。  家族5人でテーブルを囲んでカレーを食べる。この家では夕食のときはテレビをつけない。普段から会話の少ない家族だから、テレビをつけるといっそうしゃべらなくなるからだろう。      
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