佐藤 隆

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 「そんなわけないじゃないですか。たまたまですよ。」  川島が震えた声で答える。  「いや、あのヒューマニティーなんたらとかいう機械はしっかりと有能な人間を見分けるらしいぜ、おれらは無能な人間らしいから uselessnessに分類されちまったけどな。」  「無能な人間なんていませんよ。僕はただ運が良かっただけです。僕はただ・・・」  秀樹がさえぎってしゃべりだした。  「だまれよ。どうせお前も心の中では俺らのことを見下して笑ってんだろ。どうせ貴様らはuselessness。人類にとって何の役にも立たねぇクズだって思ってんだろ。」  「そんなこと思ってない!」  川島は震えた声で叫んだ。  「その人が無能とか有能とかないんだよ。みんな同じ一人の人間として、この世界を生きてるんだよ。僕ら、」  今度は不良の1人が川島の言葉をさえぎった。  「貴様のそういう善人ぶるとこがむかつくんだよ!」 そういうと不良グループは一斉に川島を殴った。蹴った。川島は抵抗もせず、うめき声も発さず、ただ歯を噛みしめ、うずくまりただ殴られた。蹴られた。秀樹はそんな川島をただ見ていた。  不良の1人が秀樹に行った。  「お前もやれよ。案外すっきりするもんだぜ。」  秀樹はそのまましばらく川島を見ていたが、心の中で何かが決まったらしく、全身に力をいれた。そしてうずくまっている川島の横腹を、自分の出せる最大限の力で蹴った。川島はうずくまっているままだった。その歯は赤く染まっていた。  秀樹が川島の横腹を蹴った後、不良たちは帰りだした。しかし秀樹はその不良たちの顔の中に満足したような様子はまったく見いだせなかった。秀樹は最後まで川島を見ていた。川島は血まみれになり、のどから絞り出すようなか細いうめき声をあげながら、地面の上でもがいていた。  「これが1人の人間の理想ではどうすることもできない、世の中の現実ってやつだ。」  秀樹はそう吐き捨てると、その場を去って行った。    日はもう暮れかけて、紅い夕日が隆の部屋から綺麗に見えた。暑くはなかったが、気持ちいいと言えるような夕方ではなく、風が吹かないからか、湿度が高いからか、隆は不快感を感じていた。  そんな中、隆は自分の部屋で午前中に隆之助宛てに送ったメールの返信がきていないか確認をしていた。
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