第1章

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翌朝、目が覚めると、窓の外から激しい雨の音が響いていた。 あたしは、ゆっくりと半身を起こし、手を伸ばしてカーテンを開けた。 「これじゃジョギングは中止かな」 重苦しい空が、号泣しているように、大きな雨粒を勢いよく降り落としている。 たしか昨日は、智樹さんにベッドまで送られ、そのまますぐ寝入ってしまった。なんだか、ひどく疲れていたのだ。 それに何故か、記憶もあいまい。 昨日道場にいて、地震があったような。 それから、智樹さんに抱きしめられたような。 そう思って、ぼっと体が、火がついたように熱くなった。 な、なんで、そんなことに! そういえば、あたし、やきもち焼きすぎて智樹さんにあたっていたような気がする。 ああ、でも、ぼんやりとして、よく思い出せない。なぜだろう。 とにかく、謝らなくては。 そう思ってベッドから飛び出ると、ドアをノックする音かした。 「はい?」 ゆっくりとドアを開いて入ってきたのは、智樹さんだった。 「起きていたんだね」 少しばかり疲れたような顔をしている。いつもの爽やかさに影が落ちたようだ。 あたしは慌てて、智樹さんに駆け寄り謝った。 「昨日はごめんなさい。あたし、なんか取り乱していたかも……」 勢いに驚いたのか、智樹さんは目を見開いてあたしを見てから、安心したように大きな息を吐いて微笑んだ。 「良かった、……覚えているんだね」 「え?えっと……でも、少しあいまいなんだけど……」 また、昨日抱きしめてもらったことが頭に浮かび、顔が熱くなってきた。 智樹さんはそんなあたしを見ながら、何故か泣きだしそうな悲しげな顔をした。 「また、俺のこと忘れてたら、どうしようかと思った」 「え?」 あたしは顔を上げて智樹さんを見た。
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