きらら

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「なんもないな。電車がくるまで一時間かあ」 竜二が荷物を待合室のベンチに置いた。 「ほんと。山と田しかないね。お祭りの時期じゃないのが残念」 私も携帯を眺めて息を吐く。本当ならば今ごろは鍾乳洞を見て、渓流下りを楽しんでいる頃だ。お昼も食べていたかもしれない。船は写真で見ただけなんだけど、木で作られている。船頭が竿を使って目的地まで移動するって書いていた。写真の紅葉、赤色の景色に惹かれてこの旅行を思い付いたのに、このままだと夕暮れになってしまう。 竜二だって職場で溜まった有給を消費するための四泊五日の旅行なのに、宿に入る時間も変わってしまいそう。 前日泊まった宮城県の仙台で寝ずに町を歩き回ったのが不味かったんだ。出発も少し遅れてしまったことで計画がどんどん狂っていく。やりたいことたくさんあったのにな。 「自販機も売店もないみたいだ」 だけど、竜二は楽しそう。駅のくたびれたホームをいったりきたりしてる。
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