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鼻歌なんて歌っちまうくらいにハッピーな朝を迎えていた俺は
テレビの星占いなんててんで気にも止めてなかった
爽やかな朝
セレブみたいな食卓…
いや…あくまでもそれは気分てだけで
セレブなんか程遠い我が家の食卓には
クロワッサンじゃなく白米と納豆がいつもと同じく並んでいる
『おはよ~』
声まで微妙に弾んでる気がして俺はそれを咳払い一つして誤魔化した
けど俺のハイテンションを瞬時に察知したらしいジジィが新聞から顔を上げた
「何じゃ?日曜日なのに早起きだな」
『まぁね』
「どこか行くのか?」
それには答えずに隣の椅子に腰を下ろすと
俺の飯と味噌汁をテーブルに置きながらアヤさんが笑った
俺とジジィとアヤさん三人だけの食卓
英二さんと永遠と姫はまだ眠ってるようだ
「おじさん 隆君はデートなのよ」
アヤさんの発したデートって単語に思わず頬が緩む
「みゆちゃんとかい?」
『他に誰がいるんだよ』
「ほう!浮気はしとらんようじゃの」
…浮気って
返事の代わりに俺は味噌汁を啜りながらジジィをギロリと睨んだ
「お~こわ…」
「隆君は浮気なんか絶対しないわよねぇ~」
何故かアヤさんまで含み笑い
みゆと想いが通じ合ったあの卒業式から半月…
浮気なんかするわけない
いやそれは日が浅いからとかの問題じゃなく
この先ずっと浮気なんかしないって意味なわけで
「デートどこ行くの?」
『富士山見にドライブだよ』
「今日はお天気だし景色綺麗だろうね」
『景色もだけど…ロープウェー登ると美味い団子が食える茶屋があるんだって』
「いいなぁ~お団子かぁ それに何より新車だしね!」
『うん!初めてみゆを乗せるんだよ』
本日はみゆと恋人同士になって初めてのデート
おまけに新車だ
ピカピカのレガシィツーリングワゴン
自分で買うつもりでバイト代を貯めていたのに
中古を買うと言ったら新車にしろとジジィが言い出して
新車で買うには足りないと言った俺に
卒業祝いだと言ってポーンと新車を買ってくれた…
生活費以外のバイト代は結婚資金にしろなんて言って…
「やだぁ~!隆君何かそれエロくも聞こえる」
『はい?』
「乗せる場所間違えたらダメだよ~」
『はぁ…』
「うふふ…」
『…………』
……あのお方から下の影響を受けておられる…
アヤさんが一瞬だけエロい悪魔様に見えた
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