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早朝。
晋爾たちは、朝日が出る前に起きると出発の準備を始めた。少しずつ、辺りは白み始めていた。
全員の目覚めは最悪だ。
「さて…気分は最悪だけど行くかー。」
「次は、オーティット。」
「秋の街だな。」
鼻の奥には、まだ血の臭いがこびりつき、息をする度に臭いがしている気がした。
吐きそうになるくらいの鉄の臭いに、項垂れながら歩く。
スプリットからオーティットまでは、山を三つほど越えなければならない。
まだまだ終らない旅のなかで、あと何人この手で殺めなければならないのかと、山や谷を越えながら思う。
いつの間にか、山をひとつ越えていた。
「まだ、オーティットまではかかる?」
「そうですね。あと山を二つほど…。」
「致命的な大怪我のあとだ。つらいか?」
「いや、大丈夫。さっさと越えて終わらせたい。なにもかも。」
なにもかも終わらせたい。
ホントは戦いたくなんかない。
王位継承者とかなんとかなんてどうでもいい。
ただ、みんなが共存して平和的に暮らすことだけを願ってるんだ。
もう、あんな悲しい思いはしたくない。
誰にも、自分のような思いはしてほしくない、ただそれだけだ…。
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