それはまるで、毒のよう

2/38
1530人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
  ブルリ、と身体が震える。 服を厚めに着込んでいるのに、 街をこうして歩くのは 自分ひとりなんだなーと。 人混みの中でそんなことを 考えた瞬間、 拓海さんが隣にいないことを 寒く感じてしまった。 地上にあるぬくもりは ずっしりと重い冷たい空気に ことごとく押し上げられ、 空の向こうに 放たれてしまったんじゃないだろうか。 あったかくしてようとする そばから、 どこからか奪いに来るような。 寒い時期に 気力が削がれることが多いのは、 季節がそういう性質を 孕んでいるから……みたいな。 だから花も木も、 すかすかと 枯れていくのかも知れない、なんて。 .
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!