魔術師は今日も語らない

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 二輪馬車が向かう先は、バットリア大国の皇帝が住んでいる城だ。通称、漆黒城と呼ばれている城にはパーティーでもない限り客は近寄らない。それだけ寂しい位置に城はある。  バットリア大国に突風が吹き荒れる夜であった。城下町を疾走する二輪馬車の物々しい車輪音は人々を震わせた。  二輪馬車が漆黒城の門を潜り抜けてエントランスに止まる。二輪馬車から飛び降りたのは銀髪を結った青年だった。  青年は馭者に礼も言わずに漆黒城に踏み込んだ。  玄関を入ると赤い絨毯が広がる。青年は二階に続く階段を駆けあがり、人が詰め寄せている部屋へと飛び込んだ。
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