第1章

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「木崎、寝る前に飲んで行かない?」 部屋の扉に手をかけた私はリビングへ向かう初見を見た。 「夜景見えるよ」 「……」 ベランダに出ると小さなテーブルと椅子があった。 夜景の煌めきも申し分ない。 「初見って本当にあれだね」 「……どれだよ」 テーブルにビールを置いた初見は椅子を引いて腰を下ろした。 「社長の息子だし、外車乗ってこんなマンションの最上階に住んでるし…… 型通りだなぁって思って」 「そこに顔も良いって入れておいてよ」 「……」 私は口を閉じて鼻から溜息を吐いた。 椅子に座ってビールを貰う。 ビールが空になり 「冷蔵庫になんか入ってたかも。 ついでに着替えてくる」 初見は一度中へ戻った。 街の喧騒も殆ど聞こえてこない。 雲間から見える空には一等星の星が見えるだけ。 私は椅子にもたれ、顔を空に向け目を閉じた。
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