第1章

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1月 初見さんが上へ行った。 そして先輩を連れて行った。 父が手を回す前に、安全な場所へ連れて行った。 そして会社にいても顔を合わせない日々が続く。 1週間で数回会っていたのが 1週間で1度、2週間で1度に変わっていく。 これ以上近付かないようにしていても、結局は顔が見たくて連絡をしてしまう。 初見さんのところで慣れない事をやっているせいもあって随分疲れているように見えた。 ある時 先輩の部屋を出ようとすると 「羽山」 呼び止められた。 「……はい」 じっとこちらを見上げられる。 「少し痩せた?」 「……」 「やつれた?」 「……そんな事 無いと思うんですけど」 まっすぐな視線を受け止めきれなくなって、下を向く。 先輩はそれ以上聞いてこなくて、でも納得もしてない表情をしていた。 「じゃあ、ゆっくりしてください」 背を向けて部屋を出る。 心を開いてくれていることに 自分を受け入れてもらえていることに 些細な優越感を感じていた頃の自分が恨めしい。 こんなはずじゃなかった。 通り過ぎる1人で良かった。 少し近くにいすぎてしまった。 自分も心を許してしまった。 貴方と出逢ったあの瞬間から きっと好意を持っていた。
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