第1章

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『日曜日の夜行ってもいいですか?』 メールを送る。 ケリだけはつけていこう。 自分の望みや淡い期待を断ち切るためにも。 了承の返事が来た。 体調は随分良くなったらしい。 良かった。 「お世話になりました」 金曜日の夜挨拶に回る。 事情を知っているのでみな「今後もよろしく」と声をかけてくれる。 役員フロアに上がり廊下を進む。 「専務なら外出だよー」 後ろから声がした。 振り向くと鞄を手にした初見さんが自分の部屋に入るところだった。 「そうですか」 「ちょっと寄ってく?」 「……」 こちらが答える前に初見さんは部屋の中へ消えて行った。 「失礼します」 「んー、適当に座って」 机は2つ。 初見さんと先輩の席だけ。 窓側に初見さん、少し離れた壁側に先輩の机。 その机上は書類の山が丁寧に分けられていた。 「仕事大変ですか?」 「まぁ、楽ではないよね」 そうはいいつつ、この人の弱っている姿なんて見たことない。 「でもまぁ、一人巻き込んじゃってるから弱音吐いてらんないし」 「……」 「俺木崎に幻滅されたくないんだよね。 同期として見放されたくない」 「……」 「だから多少のことじゃ潰れられない」 「初見さんは……信頼してるんですね」 「してるしてる。 曲がった事が大嫌いで、仕事に対して真摯で、私生活に頓着してない感じがザ、木崎みたいな」 「……」 「で、どうすんの?」
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