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「理央」
愛瑠と初めて会ったのは
8歳の時だったと思う。
父から紹介された一言目が
「お前の婚約者だ」
だった。
大人の陰に隠れて、ぱっちりした目を動かして
こちらを見ていた。
愛瑠はいわゆる温室育ちのお嬢様で
親の言うことを素直に聞いて
まっすぐ育っていた。
服装も髪型もみるからに清楚なお嬢様だった。
それは自我を主張する年頃になっても変わらなかった。
愛瑠とは会えば普通に話していた。
お互い親が決めた関係を押し付けられた
連帯感があったわけではない。
ただ、漠然としていたから
反感も持たなかった。
愛瑠の事を好きでも嫌いでもなかったのは
世の中に対しての知識の無さ
親に対しての順従さ
自分に対しての変わらぬ態度
それらが自分の進む道を邪魔しなかったから。
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