第1章

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「理央」 愛瑠と初めて会ったのは 8歳の時だったと思う。 父から紹介された一言目が 「お前の婚約者だ」 だった。 大人の陰に隠れて、ぱっちりした目を動かして こちらを見ていた。 愛瑠はいわゆる温室育ちのお嬢様で 親の言うことを素直に聞いて まっすぐ育っていた。 服装も髪型もみるからに清楚なお嬢様だった。 それは自我を主張する年頃になっても変わらなかった。 愛瑠とは会えば普通に話していた。 お互い親が決めた関係を押し付けられた 連帯感があったわけではない。 ただ、漠然としていたから 反感も持たなかった。 愛瑠の事を好きでも嫌いでもなかったのは 世の中に対しての知識の無さ 親に対しての順従さ 自分に対しての変わらぬ態度 それらが自分の進む道を邪魔しなかったから。
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