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「ちゃんと、区切りはつけるつもりです」
「思いっきり後ろ髪引かれる顔してるくせに」
憎たらしい顔して笑う初見さんを睨むこともできない。
「先輩の事よろしくお願いします」
小さく頭を下げた。
「あの人は
強がりだから」
腕を組んだまま初見さんはじっとこちらを見つめる。
「羽山、それはずるいんじゃない?」
ふ、と口元を歪めた。
「そのよろしくはどういう意味?
仕事上上司としてできることはケアしろって事?
それとも、お前が支えていた部分も俺に任せるって事?」
「……」
「それともあれか
俺になんらかの働きを期待してるわけ?
木崎の気持ちが消えないように
酸素を送る役目でも」
「……」
この人の何でも分かったような目が怖いんだ。
仕事上でもこの目で見られたら背筋が伸びる。
「本音の一つでも置いていけ、それ次第では多少役立つ事もあると思うよ」
人当たりの良さそうなそれでいて誰にも媚びない自信に溢れた笑顔を見せる。
この人は自分の魅せ方を知っているんだ。
「近付かなければ良かったって後悔してます」
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