第1章

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今から酷い事をする。 貴方の顔を見たらきっと気持ちが折れてしまう。 だから、貴方に嫌われる事をします。 『先輩、これでさよならです』 そう告げた時 貴方の瞳が固まった。 振り切るように部屋を出た。 手の中にいた感触が消えない。 『好き』 って聞こえた気がした。 『言った事ないでしょ』 『え?』 『付き合ってるのに、好きだって』 先輩は黙ってしまった。 『それね、原因の一つ』 難しい顔して黙っている先輩を促した。 『言ってみて』 そう、無理やり言わせようとした。 その言葉が聞きたくて。 でもいざ掠れた声が聞こえたら ちゃんと自分に向かって言おうとするから それを遮るように口を塞いだ。 混乱する先輩を置き去りにして 部屋を出た。 鍵も置いてきた。 貴方との繋がりはもう無い。 連絡先も自分の手の中には無い。 エントランスの外に出て足を止める。 背中で自動ドアが閉まる。 これでもう 戻る事は出来ない。
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