第1章

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「全然しらなかった。 姉ちゃんも何も言ってなかったし」 「……」 「羽山さんは営業ですか?」 「うん」 「たまには飯いきましょ?」 人懐こい笑顔でそう言われ、頷いて返した。 「じゃあ、また」 淳君が去ると、また遠くで 「お前社長の息子と知り合いか?」 「うん」 「教えろよ」 「いや、俺も今知った」 話す声が耳に届いた。 居心地の悪さなんてどうって事ない。 人に見られる事には慣れている。 でも、どこに行っても 誰と会っても 後ろに父親がいると 透かされる。 まるで腫れ物。 言葉にしなくても視線で態度で伝わってくる。 そういうのは気にしないでいられると思ったけれど これは結構ストレスかもしれない。 そう思っていたけれど、一週間もすれば周りが慣れてくれたらしく多少気は使われるものの業務に関して支障はなかった。 「羽山、昨日一緒に行った一ノ瀬担当として動いてもらうから」 「はい」 同じ課の守矢さんは他の後輩と同じように対応してくれるのでありがたい。 「で、金曜の飲み会は?」 「飲み会という名の合コンですよね? いきません」 「つめてーな」 軽口も叩いてくれる。
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