第1章

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日本酒の品揃えも豊富で酒は進んだ。 淳君は強いらしく飲んでも顔に出ない。 飲み始めて1時間程経った頃 「羽山さん、大丈夫ですか?」 突然そう問いかけられた。 「……え?」 「俺なんかが言う事じゃないですけど……しんどそうだなって」 「……そんな出てる?」 衝撃的だ。 そんなふうに思われる表情をしてるつもりがなかったから。 「いや、全然。 同期の奴らは貫禄あるとかいってますけど、俺は前にも会ったことあるから…… それと比べちゃうんですけど」 「……」 「羽山さんて大人だから あんまり弱味とか見せないんだろうけど、愚痴の一つも言わなそうだし、そういう人も作らなそうだから」 「……」 「まぁ、年下の奴に言われたくないとは思うけど」 語尾の小さくなる彼の言葉に 「ありがとう」 と、返すと 安心した表情を見せた。 木崎家は皆良い人ばかりだ。 彼を見れば否応無しに先輩がよぎる。 考えないようにしたって 仕事で頭を埋めたって ふと、現れる。 先輩、今もいつも通りですか 相変わらず誰にも関心ないような顔して、どんなに仕事が詰まっていても顔にも出さないで淡々とこなしていますか それとも 誰かに安心した顔みせたりしてますか 寄りかかれる様な人ができそうですか 自分から触れたいと そう思う人が近くにいますか そんな思考に陥れば 喉の奥が重くて 胃が掴まれたみたいに 気持ち悪くなる。 今更だ。 こんな事思うなんて今更だって分かっているのに。
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