第1章

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******* 「休みが欲しい」 机に突っ伏した初見が呟いた。 時刻は午後8時50分 このフロアの役員達は既に帰宅した為電気のついた部屋はここだけ。 「土日も最近は付き合わせて悪いね」 体を起こし椅子に凭れると上を向いた。 さすがの初見も連日連夜他社役員就任祝いに参加してお疲れのようだ。 「いいえ、お気になさらず」 むしろその方がありがたい。 「木崎、飯食ってる?」 会議の資料の数字を確認していた初見がふと視線を此方に向けた。 「……それなりに」 「ふーん」 そう言いながら私をじっと見てくる。 私は視線を伏せたまま目の前の仕事に取り組んでいた。 4月に入り忙しさを理由にして食事を抜く事が多くなった。 食欲も無かったし、それでもよかった。 淳が会社の寮に入るまで家から通う事になった。 当然の事だけど淳の口から羽山の名前は出る。 共通の知人だ。
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