第1章

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あれは自分が高校生の時 同じ様に妹のエリカにも婚約者だと父親が引き合わせた男がいた。 エリカは酷く反発して 家に帰って来ない事が多かった。 カチャ リビングの扉が開いた。 「おかえり」 「……ただいま」 リビングで映画を見ていた時妹が帰ってきた。 暫く顔を合わせていなかったら 長かった髪は切られ 黒かった髪は染めてあった。 典型的過ぎる反抗期。 「飯冷蔵庫にあるよ」 「……いらない」 テレビに顔を向けたまま会話を交わす。 冷蔵庫を開けて水を取り出した妹が 「男ってそういう歴史物の話好きだよね」 と、呆れたようにテレビに目を向けて言った。 「そうかもね」 「下剋上とか男のロマンなわけ? 君主の為に命捨てたり 有益な関係を築くため嫁に貰い 攻め入られない様嫁がせるなんて……」 途切れた言葉に胸の奥がざわめいた。 「まるで、戦後時代だ」 部屋を出て行く足音が とてもとても やるせない。 レールの上をただ進む。 それほど楽なことは無いのに なぜか気持ちは追いついてこない。
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