第1章

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「……っぅ」 まただ。 鎖骨の下あたりが痛み出す。 私はそれを押さえて扉を開けた。 「おはようございま……」 挨拶の言葉が途切れた。 ブラインドが上げられた窓から眩しい光が部屋に差し込む。 こちらに背を向けて立っているその後ろ姿に、心臓が大きな脈を一つ打つ。 「あぁ、早いね おはよう」 初見が振り向いてそう言った。 私は固まった体と顔を無理やり動かし、自分の机へと向かった。 「髪、随分短くしたんだね」 柔らかそうな少し癖のある伸びた髪は短く切られ整えられていた。 心臓の音はまだ乱れてる。 「何?」 私の視線に気付いて初見は首を傾げる。 「いえ」 慌てて視線をはがしてパソコンの電源を入れた。 背丈が似ている 堂々とした佇まい そして短くなった髪 羽山に見えたなんて……何でそんなこと思ったんだろう。 いるはずないってことは この数週間で分かっているのに。
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