第1章

32/66

337人が本棚に入れています
本棚に追加
/66ページ
忙しいのは分かっている 食事は取れていないし 眠れて無かったけど 気力はあったし 体調だって悪くない。 大丈夫だ。 「木崎、電話入った先行って」 「はい」 16時からの会議は17時30には終わる予定。 役員が揃うだけで空気が重苦しくなる。 社長は初見を最初から特別扱いしていない。 他の社員と同じ様に。 それが自然に出来る事で、初見が目立つ事は無い。 凄い人だ。 「最後にゴールデンウィーク中に現場で発生した休業災害の件で詳細報告があります」 え…… 耳に入ってくる情報が頭の奥に響く。 ぐらりと頭が揺れた。 落ち着け、大丈夫 呼吸をして 深く吸って 目を閉じて 落ち着けば大丈夫。 赤い回転灯が脳裏にちらつく。 「木崎行くよ」 肩を軽く叩かれ、顔を上げた。 「……」 私の顔を見て初見が眉間にしわを寄せる。 「どうした……真っ青じゃん」 「……なんでも無い」 人がはけた会議室内。 机に手をついて立ち上がった瞬間視界が反転する。 慌てて何かにつかまろうとしたけど、体は重力に従い地面に引きつけられる。 「木崎っ」
/66ページ

最初のコメントを投稿しよう!

337人が本棚に入れています
本棚に追加