第1章

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「……」 はっとして目を見開いた。 体を起こした事で自分が横になっていた事を知る。 「急に起き上がらない方がいいよ。 身体痛いところない?」 声のする方に顔を向けると初見がテーブルにタブレットを置いて立ち上がる。 「応接室?」 黒い革張りのソファに寝ていたようだ。 「ん、この時間なら使ってないから」 「私……倒れたの?」 「倒れたっていうか……ここまでは歩いて来たよ。 支えは必要だったけど」 会議のあった部屋からはそう離れていない。 「……ごめん」 私は顔を覆ってうな垂れた。 初見は私のいるソファに浅く腰を下ろした。 ポケットに手を入れたままの初見は此方に背を見せている。 「現場の事故の事急に聞いたから?」 「……」 「体調優れないのも重なったか」 「……そう、かな」 「木崎さぁ、泣いたら?」 初見が此方に顔を向けずに そう言った。 「……泣くって、なんで?」 自分の声じゃ無いみたいにか細かった。 「好きな人に会えなくなったら 泣くでしょ普通」 「……なんで?」 「見てて痛々しいんだよ。 バランス崩してるのだってそれが原因じゃん」 「……初見、好きって?」 「……」 「私が……好き?」 誰を 好きだっていうの?
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