第1章

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髪を切った初見の後ろ姿が 羽山に見えたから 寝不足だから 現場で起きた事故の事聞いたら お父さんの事思い出してしまった そう、それだけ。 「背中なら貸すよ」 初見は私を見ないまま少し屈めた体勢でいる。 好きな人に会えなくなったら 泣く事が普通なのか。 頭の中に様々な思考が浮かんでくる。 まだすっきりしない頭をもたげて 私は初見の背中を借りた。 目を閉じると初見の呼吸する動きと鼓動の音と体温が伝わって来た。 好き……か。 私は羽山が好きなのか。 胸の奥が音を立てて軋む。 最近感じていた痛みの正体。 骨折なんてしてないんだ。 これは胸の痛みなんだ。 そうか…… 私羽山の事好きだったんだ。 こんなに苦しいのはそのせいなの? 喉の奥がつまる。 鼻の奥が痛くなる。 泣くかもしれないと思った。 「木崎お前ちょっと休め。 ゴールデンウィークだってまともに休み取ってなかっただろ」 もたれていた頭をばっと起こす。 「ぃゃ……やだ」 「木崎?」 「やだ……仕事させて 1人にしないで 1人でいるなんてやだ 何もしないなんて無理だよっ 休めなんて言わないでっ」 「木崎」 驚いた表情で私の顔を見ている初見が私の肩を押さえた。
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